2月25日(土)に元職場の同僚3人で東京国立近代美術館で開催されている「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」を観に行ってきました。感想でも書いてみます。
ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock / 1912-1956)は、アメリカの代表的な抽象表現主義の画家です。床に巨大なキャンバスを敷きドリッピング / ポーリングといった技法を使って、キャンバスの上を走り回りながらオールオーバーに描かれるその作品は、独特の世界観を持ち、衝撃的で強烈な印象を与えてくれます。
私がポロックの存在を知ったのは音楽の勉強をしていた20代前半の頃です。当時読んでいた『音楽学を学ぶ人のために』という本の中で、関月子さんによる「現代における絵画と音楽 -絵画の音楽への接近-」という稿があり、その中で現代美術に大きな影響を与えた画家のひとりとしてポロックも紹介されていました。
20世紀以降、絵画の世界では自然現象を描写することをやめて「純粋に色や形だけで人間の精神に訴えかけよう」といった動きが起こり始めました。この動きは最終的に「人間性の表出を極限にまで避けて、素材そのものの提示にすべてを語らせようとする」方向へ向かうことになりますが、そうした中でポロックが試みたのが、ドリッピング/ポーリング技法による「自我の表面的なコントロールからの逃避」ということでした。
そんな現代の芸術は難しく意味不明で理解しがたいものがたくさんあり一般的に敬遠されがちです。私としては、わけのわからないものを無理してわかろうとせず(わかったふりをするのでもなく)、ありのまま感じるままに鑑賞することが大事だと思っています。しかし、それだけだとやはり意味不明なもので終わってしまう恐れがあります。そのためにも作品がどのような意図によって創作されているかを知ることがとても重要だと思っています。結局この手の芸術はコンセプトが肝になっている場合が多いですし、またそこを知ることが芸術の面白いところだと勝手ながら思っています。
そういう意味で、今回のポロック展では、ひとつひとつの絵に対して解説が詳しく丁寧に書かれていたのはよかったと思います。また初期の頃の具象画から年代を追って徐々にポロックの世界に慣れながら観ていけるようになっていたのにも、いきなりあのドリッピング技法によるショッキングな作品を見せて驚かせないようにするための配慮が感じられました。
今回の目玉と言われているのが、35年前のパーレビ国王時代のイランによって所蔵され、イラン革命以来門外不出となっていた代表作《インディアンレッドの地の壁画》です。
満を持して現れたこの作品はやはり「これぞポロック」と言えるような作品でした!(ただキャンバス全体に強弱の差がないオールオーバーな作品と言いながら、明らかに端っこの方はドリッピングが足りなく「弱い」状態になっていたことが気になりましたが…笑)
また、晩年に描かれたブラック・ポーリング技法による作品や、展示室の最後に再現されたポロックのアトリエなども大変興味深かったです。久々に芸術を堪能できたと思います。普段絶対に観る事のないものですから、なかなか刺激的で面白かったです。
東京国立近代美術館でのジャクソン・ポロック展は5月6日まで開催予定とのことです。ぜひ興味のある方は行ってみてはいかがでしょうか!何かしら得るものはあると思いますよ。
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